長年、水回りのリフォーム現場に携わってきたベテランの職人に、トイレリフォームでよくある「見積もり外の追加費用」について話を伺いました。職人がまず指摘したのは、古いトイレの床下の状態です。特にタイル張りのトイレから洋式トイレに変更する場合や、長年水漏れを放置していたケースでは、便器を外してみたところ、床下の木材が腐食していたり、シロアリの被害に遭っていたりすることが少なくありません。このような場合、単に便器を載せ替えるだけでは強度が保てないため、床下の補強工事が必要になり、数万円から、規模によっては十万円以上の追加費用が発生します。これは実際に解体してみなければ分からない「見えないリスク」であり、古い家屋のリフォームでは常に念頭に置いておくべきポイントだと言います。また、排水管の配置も費用を左右する大きな要因です。新しい便器の排水位置が既存の配管と合わない場合、排水アジャスターという部材を使って調整しますが、マンションなどで床下のスペースが限られている場合は、配管そのものを移設する大掛かりな工事が必要になることがあります。さらに、最近増えている「タンクレストイレへのリフォーム」特有の追加費用についても注意を促しています。タンクレストイレは水道の圧力を使って洗浄するため、二階のトイレや高台にある住宅では水圧が足りず、正常に流れないことがあります。その対策として、水圧を高めるためのブースター付きモデルを選んだり、専用の加圧ポンプを設置したりする必要があり、これが本体代金や工事費を数万円押し上げる要因となります。また、タンクレスには手洗いがついていないため、別途手洗い器を設置するとなると、その分の給排水工事費と本体代が加算され、最終的な総額が見積もりを大幅に上回ってしまうことも珍しくありません。職人が語るアドバイスは「見積もり金額ギリギリで予算を組まないこと」です。工事には常に不測の事態がつきものであり、予算の十パーセントから二十パーセント程度は予備費として心積もりをしておくことが、現場でのトラブルを避け、心に余裕を持って完成を待つための秘訣だと言えます。現場を知るプロの言葉には、カタログの数字だけでは見えてこない、住まいを守るための重みがあります。